症例報告 ―前立腺がん
当クリニックでの症例報告 ―前立腺がん
腰腸骨への転移と多発肝臓転移にて腹部膨満、全身倦怠、そして大幅な血中PSA値上昇(6145ng/ml)を来した前立腺がん患者に対し、免疫治療と抗がん剤の肝動脈注入治療にて肝臓転移病巣が大幅に縮小し、PSA値がほぼ1/10まで低下(643ng/ml)した症例
- 患者さま:
- 63歳 男性
- 診断名:
- 前立腺がん
- 免疫療法:
- 樹状細胞ワクチン療法、活性化Tリンパ球療法
- 標準治療との併用:
- 肝動注での抗がん剤治療
- 免疫療法開始時期:
- 2012年10月
- 症例報告時期:
- 2013年6月現在
- 担当医師:
- 神戸ハーバーランド免疫療法クリニック 横川 潔
治療内容と経過
治療までの経緯|2009年秋頃よりの持続的腰痛にて専門医を受診し、同年12月に精密検査等で多発骨転移を伴った進行前立腺がんと診断される。その後ホルモン治療と抗がん剤治療を2年近くに渉って受けていたが、2011年7月頃より血中PSA値が大幅に上昇し始め。同年9月のCT検査で肝臓への多発転移が確認され、免疫治療を希望して当院を受診された。
2010年1月 | 前立腺癌、多発性骨転移の診断 PSA値:1568 |
2010年2月 | LH-RHアゴニスト3か月製剤使用開始 |
2011年10月 | 抗癌剤ドセタキセル開始、2012年6月まで12回投与(2012年6月PSA値:218) |
2012年9月 | CTにて多発性肝転移発見 PSA値:3348 神戸ハーバーランド免疫療法クリニック初診 |
2012年10月上旬 | 樹状細胞ワクチン療法開始 PSA値:6145 |
2012年10月下旬 | 樹状細胞ワクチン療法と抗がん剤の肝動注治療の併用を 開始 PSA値が徐々に低下 |
2012年12月上旬 | 活性化Tリンパ球療法の併用開始 2週間毎に投与 |
2013年2月 | 多発性肝転移のCT下減少、縮小が確認される PSA値:1417 |
2013年4月 | 抗癌剤の全身投与を加える PSA値:643 |
患者さまより
患者さまご本人より以下のお言葉をいただきました。
“平成22年病気が見つかり、H24年8月に食欲不振、お腹の張りが出始めました。CTを撮影したところ肝臓転移を指摘され、「残りの人生は好きなことをやって下さい。」と当時の主治医から見放されました。 夢も破れ、とても悲観的になりました。
しかし、9月にこちらのクリニックで免疫治療に出会い、更に紹介していただいた提携先の病院にて肝動注による抗がん剤との併用治療を受けることで、肝転移も小さくなり、お腹の張りも解消されました。
このような治療を一人でも多くの方に知ってもらい、あきらめずに治療を受けてもらいたいです。”
また、ご家族の方は病状が落ち着いて、一緒にご趣味の旅行に行かれることをとても楽しみにされています。
担当医師から
昨年2012年9月に当クリニック受診時には右季肋部下4横指幅の肝臓腫大と腹部膨満、そして軽度の殴打痛が認められ、併せてCT画像からも可及的に早急な対応が迫られた為、当院での免疫治療と抗がん剤肝動注治療の開始を計画しました。 翌月10月からの上記治療が奏功し、本年2013年5月時点でPSA値643、肝機能も正常に復して食欲も回復し、現在は自宅にて療養中です。CT像から肝臓転移像は大幅に縮小しており、今後は抗がん剤の副作用と考えられる貧血に対処しつつ、抗がん剤の肝動注と免疫療法を中心にして治療を継続して行く予定です。